モンゴルに引き続き、お金のお話をば。
今回は、アルメニアの紙幣です。なかなか見ることないですね。
アルメニアの通貨は『ドラム』です。ギリシャ語の『ドラクマ』、アラビア語の『ディルハム』と同じく『お金』を意味する言葉です。
それではさっそく見ていきましょう。

500ドラム紙幣
本来紙幣があるのは1000ドラムからなのですが、記念紙幣として2017年に発行されたのがこちらの500ドラム紙幣。
ノアの方舟の欠片が入った箱が描かれ、背景にはアララト山とノアの方舟の欠片が保管されるエチミジアン大聖堂、右上にはオリーブの葉を加えたハトが飛んでいます。宗教色の強めなデザインですね。

ちなみに裏面はノア一家と動物たち。

1000ドラム
紫の紙幣に描かれるのはパルイル・セヴァク。
アルメニア・ソビエト社会主義共和国の詩人。代表作は『絶え間ない鐘楼』
トルコとの領土問題、祖国の喪失をテーマとした詩です。

2000ドラム
描かれるのはティグラン・ペトロシアン。
チェスの世界チャンピョン(1963年―1969年)です。
防御的なプレイスタイルから『鉄のティグラン』という異名を持ちました。

5000ドラム
この人物はウィリアム・サローヤン。
アメリカ、カリフォルニア州生まれのアルメニア系アメリカ人の劇作家・小説家です。
アルメニア移民の生活や、大恐慌の中での庶民の生活を描きました。
代表作は『君が人生の時』(ピューリッツァー賞受賞)、『人間喜劇』(アカデミー賞受賞)

10000ドラム
描かれるのはコミタス。
オスマン帝国(現トルコ)生まれのアルメニア人。司祭であり、音楽家です。本名はソゴモン・ソゴモニアン。オスマン帝国によるアルメニア人迫害による殉職者の一人とされています。パルイル・セヴァクの詩のテーマとなった人です。

20000ドラム
海洋画の巨匠、イヴァン・アイヴァゾフスキー。
ロシア帝国のロマン主義画家。現クリミア生まれのアルメニア人です。
難破した船の残骸につかまり漂流する人々を描いた、『第九の波』(ロシア美術館所蔵)が有名ですね。

50000ドラム
啓蒙者グレゴリウス
アルメニア使徒教会の創設者。301年、彼はアルメニア王ティリダテス3世をキリスト教に改宗させ、アルメニアを世界で最初のキリスト教国にします。
グレゴリウスは、当初はゾロアスター教を信仰していたティリダテス王によって深い穴(ホル・ヴィラップ)に投獄されますが、奇跡的に14年間生き延び、王の病を癒したことで、王はキリスト教を受け入れました。

100,000ドラム
最高額の10万ドラムに描かれるのは、エデッサのアブガル5世(紀元前1世紀~50年頃)。
アルメニア王国の属国であったオスロエネ王国の王であり、最初のキリスト教徒になった王と言われています。なんとイエス・キリストと文通をしていたそうです。
イエス宛てに『病気を治してほしい』と手紙を送り、イエスからは口述で『すべてが終わったら弟子の一人を送ります』という返事があった、という伝承があります。
ということで今回はアルメニアのお金でした。