中央アジアを旅すると、バザールや土産物店でひときわ目を引くものがあります。色鮮やかな花や植物、丸い太陽のような模様が、大きな布いっぱいに刺繍された『スザニ』です。
一見するとただの華やかなデザインの布のようにも見えますが、これらの刺繍には、中央アジアで暮らしてきた人々の願いや、家族の歴史が込められています。今回は、ウズベキスタンをはじめとする中央アジアで受け継がれてきた、スザニの魅力をご紹介します。
「スザニ」って何?
スザニという言葉は、ペルシア語で「針」を意味する「スザン(suzan)」に由来するとされています。
中央アジアの広い地域で見られる伝統的な刺繍布で、壁掛けや掛け布、室内装飾などに使われてきました。なかでもウズベキスタンは代表的な産地のひとつです。
タシケント、サマルカンド、ブハラ、ヌラタ、シャフリサブス、フェルガナなど、それぞれの地域に特徴的な刺繍があります。例えば、ブハラのスザニには、縁取りに大きなロゼットや植物文様を配したものが知られています。一方、ヌラタのスザニには、中央に大きなメダリオンを置き、その周囲を花や植物のモチーフで飾ったものがあります。

スザニと結婚
スザニを語るうえで欠かせないのが、結婚との関係です。伝統的な社会では、スザニは花嫁の持参品、いわゆる婚礼用の持参財の重要な一部でした。家族や親族の女性たちも加わって刺繍を施し、結婚を迎える頃には何枚ものスザニを用意しました。
大きなスザニは、一枚の布に一人で刺繍するのではなく、何枚かの布に分けて複数の女性が刺繍を施し、最後に縫い合わせることもありました。そのため、花や植物の模様が継ぎ目で少しずれていたり、隣り合う部分で色合いが異なっていたりします。それは失敗ではありません。むしろ、複数の女性がそれぞれの手で刺繍を施した、手仕事ならではの跡なのです。

スザニは、今も作られている
ここまで歴史的なスザニについて紹介してきましたが、スザニは博物館の中だけに存在する伝統工芸ではありません。現在でも、ウズベキスタンやタジキスタンではスザニが作られています。もちろん、昔ながらの手刺繍だけではなく、現代の生活に合わせたデザインや、機械刺繍による商品もあります。
クッションカバーやバッグ、テーブルランナーなど、日常生活に取り入れやすいアイテムも増えています。
中央アジアを旅するなら、ぜひ一度、スザニを探してみてください。
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