リトアニアの西端、バルト海に面した港湾都市クライペダから南に延びる大きな砂州。
世界遺産に登録されている『クルシュー砂州』です。
大陸とバルト海の間に、全長97kmの巨大な砂の陸地が浮かびます。
京都の天橋立の約25倍の長さです。

クルシュー砂州は紀元前3000年頃、氷河で運ばれた土砂などが堆積して形成されたと言われています。
16世紀には砂州の森林を伐りすぎたため、砂州が砂丘で覆われてしまい村々が砂に飲み込まれます。当時この土地を有していたプロイセン王国は危機感を募らせ、緑化活動を行い森が復活しました。

クルシュー砂州の南半分はロシアの飛び地カリーニングラード。哲学者カントの生地、旧ケーニヒスベルクです。リトアニアがソ連から独立したので、カリーニングラードは飛び地になったんですね。
リトアニア側の国境の1kmほど先からは立ち入り禁止になっています。

国境手前の街『ニダ』はクルシュー砂州の観光拠点になっています。
19世紀後半、クルシュー砂州は芸術家たちに人気の場所でした。その美しい景色を求めて、画家や作家などが集まり創作活動に勤しみました。

第二次世界大戦を経てソ連の管理下になると、ニダは共産党幹部や、要人リスト(ノーメンクラトゥーラ)に載るような人物のみが立ち入ることのできる保養所となります。1991年のリトアニアの独立後、すべての人に対して開かれたリゾート地として発展します。


ニダ港。のんびりとした時間が過ぎていきます。

ニダに伝わる装飾のついた旗『クルシュー・ペナント』
19世紀、漁業権を持つ船であることを証明するために船のマストに取り付けました。
色やデザインで、何の用途の船なのか、誰の船なのかがわかるようになっていました。風向計としての機能も。今では人気のお土産になっています。
首都ヴィリニュスとは反対側なのでかなり時間はかかりますが、首都からバス・鉄道で向かうことができます。
世界遺産でゆっくりと過ごしてみてはいかがでしょうか。
