ロシア語圏でも映画はとても人気のある共通話題です。
「どんな映画が好きか」で盛り上がることも多く、作品の名台詞が日常会話やネットミームとして使われることも少なくありません。
もちろんハリウッド映画も大人気で、名セリフがそのままネット文化として定着しているケースもあります。
「これを知っておけば、ロシア語圏の人たちと映画の話題でかなり会話しやすくなる」という定番作品を、ハリウッド映画とロシア・ソ連映画の両方から紹介します。
【シュレック】
誰もが知っているコメディ映画ですね。気難しく口が悪いが、実は心優しい怪物のお話です。
日本語吹替も良かったですが、ロシア語吹替も完成度が高く、いろいろなセリフがネットミーム化しています。
"Убирайтесь из моего болота!"
『俺の沼から出ていけ!』
"Хотя бы пять минут тишины!"
『ちょっと黙っててくれ、5分でええから!』
一人になりたいときや、「いい加減にしてくれ!」と言いたいときに使える万能表現です。
【ロード・オブ・ザ・リング】
こちらも言わずと知れたファンタジー大作。
闇の冥王が作った強大な魔力を持つ『指輪』を、敵の本拠地であるモルドールの火山に捨てに行く物語です。旅の仲間ボロミアのセリフがネットミーム化しています。
"Нельзя просто так взять"
『そう簡単にはいかない』
元は「モルドールへ入るのは容易じゃない」という意味ですが、「世の中そんな甘くない」という万能ミームとして使われています。
また、指輪に魅了されたゴラムの口癖
"Моя прелесть..."
『わしの愛しいしと…』
も有名で、アルコール依存、元恋人、ゲーム課金など、「執着してやめられないもの」をネタにするときによく使われます。
【マトリックス】
SFアクション映画の金字塔。
有名なのが、『赤い薬』か『青い薬』かを選ぶシーン。
自分の生きる世界がAIによる仮想現実だと知った主人公、反AI革命軍のリーダーから、『辛い真実を知る(赤)』か、『何も知らず平穏に暮らす(青)』かを選ばされます。
この赤と青の構図は、その後ネット文化や政治・社会批判、陰謀論まで幅広く使われるミームになりました。
初期ネット文化を作った世代がちょうどこの時代の映画を見て育ったため、2000年前後の作品はいまだに擦られ続けています。
もちろん、ロシア・ソ連映画にも「誰もが知っている国民的作品」がたくさんあります。
こちらはネットミームというより、「国民共通の教養」や「格言」に近い感覚です。
【БРАТ(ロシアン・ブラザー)】
ソ連崩壊直後のロシアを舞台にしたギャング映画。
無口で実直な主人公の「静かな強さ」が、90年代ロシア男性の理想像として絶大な人気を集めました。
有名なセリフは
"Сила в правде"
『力は真実にある。』
政治、スポーツ、人生論など、あらゆる場面で引用される格言です。
【Кин-дза-дза!(不思議惑星キン・ザ・ザ)】1986年
不条理の極致とも言えるSF映画。
意味不明な規則、ヒエラルキー、官僚主義、荒廃した社会――ソ連社会への強烈な風刺が詰め込まれています。
惑星キン・ザ・ザで使われる挨拶 "Ку!" 『クー!』 はだれもが知っています。
なお、作品の中ではクーをしない平民は上流階級に殴られます。
【Ирония судьбы, или С лёгким паром!(運命の皮肉、あるいはいい湯を)】1975年
ロシア語圏では毎年年末に放送される恋愛コメディ。日本でいう「クリスマスのホームアローン」的ポジションです。
泥酔したまま誤ってモスクワからレニングラード(現ペテルブルグ)に行ってしまった主人公。そこには自分の住むアパートと同じ見た目のアパートがあり、自分の家と勘違いして入ってしまいます。(当時のソ連の画一化されたデザインを皮肉ってます。)
家主のヒロインが帰宅すると、見知らぬ男がいるので当然困惑。最初は険悪な空気ですが、会話を重ねるうちに、二人は惹かれ合っていき・・・という物語です。
【Операция „Ы“ и другие приключения Шурика(作戦コード『ウィ』とシューリクのその他の冒険)】1965年
ソ連コメディ映画の大傑作。今でも幅広い世代が知っていて、セリフや小ネタが日常会話によく登場します。大人気を博したため、シューリクシリーズとして続編も作られました。
全体として、ロシア語圏では「青春のキラキラ恋愛」というよりも、苦難、不条理、忍耐、そしてその中で生き抜く人間を描いた作品が長く愛されている印象があります。
こうした映画を少し知っておくだけでも、ロシア語圏の人たちとの会話はかなり盛り上がります。
特に有名なセリフを一つでも知っていると、「おっ、この人分かってるな」と思ってもらえることも多いですよ。

