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    東欧 古代文字『グラゴール文字』を使い続けるクロアチア 2024-12-06


    シアやウクライナなど、スラヴ地域で使われているアルファベットを皆さんは見たことがありますか?
    特徴的なものだと、Я Ю Щ Ы Й Г Ж Д このあたりでしょうか。
     『ロシア文字』と言われたりもしますが、正式には『キリル文字』が正しい名称です。

    さて今回は『キリル文字』と、その前身になった古代文字『グラゴール文字』
    そしてグラゴール文字の再興を図るクロアチアのお話です。


    キリル文字の歴史は、9世紀までさかのぼります。現在のチェコの東部にモラヴィアというスラヴ人の国がありました。モラヴィア王は、カトリックを信仰する隣国に対抗するため、東ローマ帝国に東方正教の伝道師の派遣を要請します。この時に伝道師として白羽の矢が立ったのが修道士でもあり、ギリシア語・ラテン語・ヘブライ語にも長けたキリル(キュリロス)と、その兄メトディオスでした。キリルとメトディオスは、スラヴ人に東方正教を伝えるため、スラヴの言葉を表記するための文字を考案します。

    それが『キリル文字』・・・! と言いたいところですが、
    キリルが発明したものは、その前身となる『グラゴール文字』でした。


    こちらがグラゴール文字のアルファベット。
    Ⰰ Ⰱ Ⰲ Ⰳ Ⰴ Ⰵ Ⰶ Ⰷ Ⰸ Ⰺ Ⰻ Ⰼ
    Ⰽ Ⰿ Ⱀ Ⱁ Ⱂ Ⱃ Ⱄ Ⱅ Ⱆ Ⱇ Ⱈ Ⱉ Ⱋ Ⱌ
    Ⱍ Ⱎ Ⱏ Ⱑ Ⱖ Ⱓ Ⱔ Ⱗ Ⱘ Ⱙ Ⱚ Ⱛ


    お~。
    いかにも古代文字って感じがしてワクワクしますね。
    グラゴール文字は東方正教の伝播とともに、スラヴ地域で広く使用されるようになりましたが、ひとつ大きな欠点がありました。それは・・・

    形が複雑すぎて使いづらい!
    (確かに)


    そこでキリルの弟子たちは、グラゴール文字をよりシンプルなギリシア文字に近い形に改良しました。そして完成した文字を、師匠の名を取り『キリル文字』と呼びました。


    かなりざっくりですがこれがキリル文字の歴史です。
    キリル文字は、東方正教を信仰する地域に伝播し、グラゴール文字は次第に使われなくなっていきました。

    しかしです。
    キリル文字が考案された後も、グラゴール文字を使い続けた国がありました。

    それがクロアチアです。


    「え?クロアチアって、カトリックの国だし、ラテン文字使ってるよね?」
    そうです。それにもまた歴史があるんです。


    グラゴール文字ができた9世紀ごろ、現在のクロアチアに位置する地域では、東方正教とカトリックの各派が勢力争いを繰り広げていました。
    キリルの兄メトディオスの尽力により、一時期はクロアチアにも東方正教およびグラゴール文字が浸透するも、最終的にはカトリックが勝利し、カトリック教会はスラヴ語での典礼を禁止しました。しかしながら、クロアチアの主に沿岸部の一部の地域ではスラヴ語の典礼とグラゴール文字が密かに使い続けられました。

    その後にキリル文字が発明され、東方正教を信仰している地域ではグラゴール文字はキリル文字にとってかわられますが、カトリック圏となったクロアチアでは、グラゴール文字は少しずつ衰退しながらも、19世紀まで使い続けられました。

    今日のクロアチアでは、『国民性の象徴』として、グラゴール文字の再興を図る動きが起こっています。
    グラゴール文字の読み書きが教育のカリキュラムに組み込まれたり、芸術やデザイン、サブカルチャーの分野でグラゴール文字を使用することも増えています。
    オブジェや、看板などにグラゴール文字を入れたり、中にはタトゥーにするひともいるとか。
    「使いづらい」と苦言を呈されたキリルさんのデザインセンスにやっと時代が追いついたのかもしれませんね。


    クロアチアのお土産屋さんには、グラゴール文字の入ったグッズやアクセサリーなどが販売されていることも。

    クロアチアに訪問した際には、グラゴール文字を探してみてください。